この記事は、「”書くこと”で地域と繋がる講座(全3回)」を通じ、講師のフリーライター池田美砂子さんのサポートのもと、参加者の栗田多加さんが地域で活動する方にインタビューし、まとめたのもです。
あなたが欲しい場所、それはどんなところですか?
私はこれまで児童指導員という職業を通して、たくさんのお母さんと出会いました。そんな中で「産後の孤独感」は本当によく耳にするし、今まさにそんな状況にあるお母さんにも出会います。いつもキラキラして見えるママ友も、実はやり場のない思いや孤独感を抱えている、あるいはそれらを乗り越えたあと、なのかもしれません。
そのように孤独感を感じているお母さんが欲しい場所、それは、気負わず気兼ねなく出かけられる場、同じような誰かに共感し共感される、等身大の自分を受け入れることのできる場、なのではないでしょうか。
まさにご自身の“孤”育て(孤独な子育て)の経験から、お母さんの居場所を作ろうと活動を始めた方がいます。その方は高村えり子さん。今回は高村さんと、その活動についてご紹介します。
ママほぐ – リラクゼーションとモノづくり –
ママほぐは子育てママの居場所づくりを目指し、まちづくりスポット茅ヶ崎で、毎月第一水曜日にイベントを開催しています。そこではリラクゼーションやモノづくりのワークショップが、見守り保育付き(無料)で体験できます。
ママほぐは現在、高村えり子さん、古知屋千恵子さん、島村美咲さんの現役ママ3人で運営しており、メンバーの古知屋さんは保育士で、イベント中の見守り保育を担当しています。物理的にも気持ちの面でも、子どもとちょっと距離ができるとリフレッシュできるそうで、「気分が晴れる」「一人のひとに戻る」と高村さんは話します。子どもが泣いていると気になってしまうお母さんは、つかず離れず、お子さんを近くに寝転ばせてリラクゼーションを受けたり、WSに参加したりできるようです。
イベント参加者には、平塚や横浜、相模原から来られる方もいて、中にはママ友ができ「おかげで産休が楽しかった」という言葉を掛けられたこともあるそう。
子育てを“孤”育てにしない
そもそも高村さんが活動を始めるきっかけになった“孤”育てですが、高村さんはどのように孤独を感じていたのでしょうか。
高村さんは岩手県出身、サーフィンが好きで沖縄で暮らしていたこともあります。その後茅ヶ崎に引っ越し出産されることになるのですが、出産された頃はまだ茅ヶ崎にもなじめず、知り合いも誰もいない。お子さんと二人部屋にいて、たった独りぼっちと感じたそう。
子どもが生まれたことで視野が狭くなり、180度世界が変わって見える。例えば喫茶店に入り子どもが泣きだすと、泣かせちゃいけない、周りに迷惑かけちゃいけない、そんな風に感じたことはありませんか。過去に高村さんはそんな風に感じ、「子どもがいるから出かけられない」と思ったそうです。そこで、このままじゃいけない、と一歩踏み出しました。それが「お母さんが安心して出かけられる場所」「かつて自分が欲しかった場所」を作ることへと繋がっていきます。
また、高村さんは「家族のようなコミュニティをママほぐの中で作っていきたい」と話します。お子さんの成長を一緒に見守る。だからイベントの規模を大きくする必要はなく、今の規模のままずっと続けたいと。そして、規模を大きくしない理由がもう一つあります。大きいイベントはキラキラしていて、子育てに疲れている、一歩外に出ようとしているママにとって、「あっちは私とは違う」と出かけられないからだそう。「孤独を感じていた過去の私が欲しかった場所は?」「その時の自分はどんな気持ち?」と、いつも過去の自分に寄り添いながら、そしていま同じような状況にあるお母さんに寄り添いながら、高村さんは居場所づくりをしています。
古くて新しい 「地域で子どもを育てる」を仕組み化する
高村さんがいま感じていること、それはママだけで子育てはできないということ。子育てを“孤”育てにしないためには「多世代」がキーワードで、地域みんなで子育てができる仕組みが作れないかと考え始めているそうです。お母さんが助けてほしい、手伝ってほしいと言える環境にするには仕組みが必要であると。
『ママのコミュニティを今必死に作っているんですけど、自分が孤独で子育てをしている時に、いざ街に出かけた時に話しかけてくれるのは、同じママ世代じゃなくておじちゃんおばちゃんとか、おじいちゃんおばあちゃんなんですよ。街にいるおじいちゃんおばあちゃんや、商店街の八百屋のおじいちゃんに話しかけてもらったり、顔なじみになったりとか』
茅ヶ崎に越してきて3年、すっかりこの土地に馴染めたと話します。
『今はママのコミュニティ作りを一生懸命やってるんですけど、本当に必要な、孤育てをなくすには「多世代」がキーワードだと思っていて、ママの子育て世代だけでなくて、おじいちゃんおばあちゃん、自分の父母世代も一緒になって、地域みんなで子育てできるような仕組みを作れないかと企んでます。』
お子さんの成長に合わせて、高村さん自身の見えるもの、感じるものが変わっていくように、ママほぐもまた同じように変化していく、あるいは新しい何かが生まれるのかもしれません。
自分のために自分ができること
高村さんとお話しして印象深かったのが、「過去の自分」という言葉を何度も口にしていたことです。過去の自分に向けて贈りたい言葉、それをいつも高村さんは発信しています。
なぜ私にその言葉が強く残ったのかというと、実は、私自身も過去の私に寄り添いながら、文章を書いたり、場づくりをしたりしているからです。「過去の私はどうしてほしかったんだろう?」、「いま、私はどうしたいのか?」。そうして自分に寄り添うことで、自分が欲しい場所にたどり着く気がします。そして、自分のためにしていることは、自分以外の周りの人も巻き込み、気づけば「誰かのため」になっているのではないでしょうか。
文:栗田多加
プロジェクト名 | ままほぐ |
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始動年 | 2017年 |
代表者 | 高村えり子さん |
ホームページ・SNS |
https://erisangomamire.wixsite.com/mamahogu https://www.facebook.com/%E3%83%9E%E3%83%9E%E3%81%BB%E3%81%90-1358259707560558/ |