6月下旬。
満員のお客さまのなか、茅ヶ崎映画祭にて「江ノ島シネマ」が上映されました。
「江ノ島シネマ」とは、江ノ電の一駅ごとを舞台に、「つながる」をテーマとした全7話の短編作品集。
様々な背景をもった監督や脚本家、スタッフ、地域の方々の参加で作りあげたもの。
市内の商業用映画館で上映するにも関わらず、前売り券の発売日に完売(!)、関係者間で驚かれることに。
この企画をゼロから立ち上げ、さらに大きな構想を描いているのは、茅ヶ崎在住の安田ちひろさん。
湘南に、映画や映像を制作する側の人たちと、観る側の人たち双方が活用できて、
創る側の作家性が守られるような拠点を作りたい。
宿泊施設を兼ね、海外の人も交流できるようなアトリエとして、作家性のある作品が生み出されるコミュ二ティ「スタジオMalua」を作りたい。
「江ノ島シネマ」は、その幕開きでした。
解き放たれてうまれたもの
安田さんが都内で、映画やCMの制作現場で勤務していた当時、従来の縦社会の制作体制などに疑問を持ち、「作家性や個性が発揮できない」と閉塞感を感じていました。
鎌倉のゲストハウスに滞在したところ、住民たちの横のつながりと、そのなかからおもしろいことが生まれている現状に気がつきます。
2017年、茅ヶ崎のシェアハウスに転居。
市内にある「コワーキングスペースチガラボ」。
自身のやりたいことや構想を話していくなか、集まったメンバーから意見をいただき、次第に考えがまとまっていったそう。
特に、チガラボ代表の清水さんから「コミュ二ティは中身から作るもの」とのアドバイスを受け、「中身とはなにか?」を探っていくなか、「映画をつくろう!」との想いに。
最終的に決断したのも、チガラボメンバーの方々の後押しが大きな助けとなり、
「江ノ島シネマ」が形づくられました。
今回AMIGOとして、この記事を書いている私は「江ノ島シネマ」のなかの一つ、「江ノ島駅」の作品の監督・脚本、運営スタッフで参加しています。
チガラボで開催された「映画・映像制作を学ぼう」というワークショップに参加し、安田さんをはじめ、映像制作に関心のある方たちと出会います。
安田さんは、肩を並べて仕事をしていても、話をしている最中にも、別の違う発想や大きな概念を頭のなかに巡らせていて、とても魅力のある人。
決して強いリーダシップではなく、時に一歩引く姿勢を見せたり、後ろ向きなことにぶつかっても自ら仲間に相談し、共に悩む。
江ノ島シネマのメンバーは、安田さんのそんなリーダーとしての素質や、ゆるやかな性格を理解して、応援する人が自然と集まったように思います。
今回、いろいろな上映場所を回りましたが、上映後に安田さんと話したいお客様が列を作っているのも納得します。
海に吹く風のように自由に
海の近くに住んでいる私たちは、生活のなかで自然に向き合っています。
釣りをするにも、波乗りするにも、泳ぐにも、波の高さや潮の流れを。
「イワシの群れが、浜にうちあがったらしいよ!」
「夕焼けが真っ赤だから、海に見に行こう!」
「湿った海風が吹いてるから、洗濯とりこまなくちゃ」
街の先には、行き止まりがありません。
だって海があるから。
どこまで行っても壁がない、空と海が一体化した開放感は、人格を形成する上でとても大きいと、茅ヶ崎で育った私は思っています。
茅ヶ崎には、明治時代に海外で発信していた川上音二郎夫妻、歌舞伎役者市川團十郎、小津安二郎監督、森田芳光監督、開高健さんなど、豊かなクリエイティブ性が育まれる土壌は根付いていますが、現在も湘南地域に多々いらっしゃるクリエイターさん達は、個々で発信されていることが多いのではないでしょうか。
「スタジオMalua」のMaluaとは、ハワイ語で「海に吹く風」。
「垣根ない海に吹く風のように自由に」という安田さんの想い。
ジブリのような、日本を代表するクリエイティブ集団になりたい。
ピクサーのように、本音で話し合い自由に発信できる拠点をつくりたい。
湘南発の、新たな価値観の制作コミュニティ。
息苦しさのない自由な空間と、繊細さと大胆さを持ち合わせた安田さんから産み出される発想がかけ合わされ、なにが展開されていくのか、心からワクワクしています!
映像関係者でなくとも、たのもしく思う「たくらみごと」ではないでしょうか。
今後も上映は、湘南をはじめとした各地域で続く予定です。
次回の記事でご報告します。
プロジェクト名 | 江ノ島シネマ |
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始動年 | 2016年 |
代表者 | 安田ちひろさん |
ホームページ・SNS |
https://maluaproject.com |