一時的な経験よりも、続いていくつながりを。茅ヶ崎の海からはじまる、「AONOWA」坂田浩明さんの挑戦

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海のまち、湘南。

東京へのアクセスも便利なこの地域に、働きやすさや暮らしやすさを求めて移住する人は多いですが、波を求めてやって来るサーファーもまた、多いのかもしれません。

今回紹介する坂田浩明さんも、湘南の波に誘われたサーファーの一人。福岡県で生まれた後、千葉県、宮崎県、高知県などサーフポイントが多いことで知られる場所を転々とされ、現在は神奈川県平塚市にお住まいです。

そんな坂田さんの「タクラミ」は、「海のアクティビティを通じて、様々な環境にいる子どもから大人までが、垣根を越えてつながる場をつくること」。

2018年春に立ち上げられたばかりの団体「AONOWA」の活動と、その思いについて、お聞きしました。

「AONOWA」代表の坂田浩明さん。サーファー歴はおよそ20年になる。

 

福祉施設に従事して気づいた、「垣根」の存在

坂田さんはこれまでに、児童養護施設や障害者入所施設、高齢者施設など、数々の福祉施設で幅広く働かれてきています。

これらの施設に共通しているのは、生活が施設内で完結してしまいがちなこと。現場の人手不足もあって、施設の外に遊びに行ったり、地域の方々と交流する機会はとても少ないそうです。

そこで坂田さんは、湘南地域の児童養護施設の職員といっしょにサーフィンチームをつくり、施設に入所している子どもたちのためのサーフィン体験会をはじめます。

せっかく海が近くにあるのに、海に行かない日常はもったいない。サーファーとして、「海の楽しさをもっと知ってほしい。身近に感じてほしい」と思い、活動をはじめました。

以来、毎年夏限定で活動を続けていた坂田さん。ある日、サーフィン仲間からこんな話を聞いたといいます。

最近サーフィンを始めた70代のおじいさんが「今までの人生でサーフィンをやってこなかったのは、もったいなかった」と言っていたらしいんです。その時にサーフィンの力を改めて感じ、「年齢や立場の垣根を越えた場を、サーフィンでつくりたい」と思いました。垣根をつくってしまっていたのは、自分だったんです。

 

2018年春、「AONOWA」を立ち上げる

こうして坂田さんは、任意団体「AONOWA」を2018年春に立ち上げます。

「AONOWA」と命名したのは、坂田さんの奥様である坂田いつかさん。「海(青い)をきっかけに、みんなが繋がる(輪)ように」という願いが込められています。

団体立ち上げ後、初めてのサーフィン体験会を7月・8月に茅ヶ崎の海にて実施。ゆくゆくは年齢や立場の垣根を完全に越えた開催を目指していますが、まずは児童養護施設に入所している子どもを中心に、少しずつ始められています。

当日の運営は、施設職員やサーファー仲間がボランティアで手伝ってくれました。安全のため、海に入るときには子ども1人に対して大人1人が必ずつくようにしています。

 

2018年6月、湯河原にて体験会に向けた運営練習を実施。前述の70代男性もいっしょに海に入りました。(Photo by Hiroshi Fujiwara

 

2018年7月に開催された体験会の様子。湘南地域の児童養護施設から、4人の子どもたちが参加しました。(Photo by Hiroshi Fujiwara)

 

2018年8月に開催された体験会の様子。湘南地域の児童養護施設から、6人の子どもたちが参加しました。(Photo by Hiroshi Fujiwara)

 

2018年8月の体験会では、「茅ヶ崎サーフライフセービングクラブ」の方々による、レスキューボードを使ったサーフィン体験も実施されました。(Photo by Hiroshi Fujiwara)

 

体験会は無事、大成功。参加した子どもたちからは「楽しかった!」「俺、素質あるって言われたんだよね!!」「AONOWA最高!」との感想があったそうです。

また、施設職員の方からも前向きな反応があったそうで、今回の体験会は、今後施設外に出る機会が増えるきっかけになるかもしれません。

 

生きる上で必要なのは、人とのつながり

児童養護施設との関わり方・支援の仕方は様々ですが、「たくさんのお金を使って人気の遊園地に連れて行ってあげれば、子どもたちは喜ぶはずだ」という考え方には疑問をお持ちのいつかさん。

児童養護施設の子どもたちは「かわいそう」と思われがちだけど、そう思われてることが、彼らにとって本当にかわいそうなことなんじゃないかと思うんです。彼らのことを考えるのであれば、近くの大人ともっと触れ合えることが大切です。お金で大きなことをしてあげようとするだけの人は、施設に関わっている人や子どもたちのことがちゃんと見えてないんじゃないかな。

また、坂田さんも次のように言います。

例え人気の遊園地に行けたとしても、「行けた」という経験しか嬉しさは残りません。18歳になったら出ていかないといけない児童養護施設の子どもたちは、後ろ盾のない中で社会で生きていかなければいけない現実があります。だからこそ、人とのつながりは生きて行く上で絶対必要です。「AONOWA」の活動を通じて、人と人をつなげることを大切にしたいです。

 

自然環境への配慮と、今後のタクラミ

活動の際には、必ずビーチクリーンをする坂田さん。趣味ではじめたサーフィンは、やがて自然への感謝の気持ちにつながり、地球の環境問題にも目を向けるようになったそうです。

サーフィン体験会後のビーチクリーンの様子。(Photo by Hiroshi Fujiwara)

 

今後は、マイクロプラスチック(直径5mm以下のプラスチック)などの海ゴミを拾い、作品づくりをするワークショップの開催も準備されています。

その他、「活動を記録した写真の展示会」や「音楽LIVEとのコラボ」、「児童養護施設の見学会・勉強会」など、一年を通して活動を続けていかれます。

来年のサーフィン体験会は、児童養護施設以外の福祉施設にも声をかけたいです。また、湘南以外の地域でも出張開催できればと思っています。

次回は、10月20日(土)にビーチアクティビティを中心とした「秋の大運動会」の開催を茅ヶ崎にて予定されています。これからも、「AONOWA」の活動を応援していきたいと思います。

ところで、実は私も、6月に湯河原で行われた運営練習に参加させていただきました。その日が人生で初めてサーフィンをした日だったのですが、波に乗れた瞬間の心地良さと、海に体を浮かべている時の自然と一体になれたような不思議な感覚は、今でも忘れられません。

 

はじめて波に乗れて喜ぶ筆者。(Photo by Hiroshi Fujiwara)

 

そうやって心を開放してくれる海だからこそ、人を癒したり、つなげたりする力があるのではないでしょうか。

「AONOWA」の活動によって、優しいつながりが生まれていくことを願っています。

プロジェクト名 AONOWA
始動年 2018年
代表者 坂田浩明さん
連絡先 AONOWA 事務局
TEL:080-1264-8163
MAIL:blue05300903@gmail.com
ホームページ・SNS

ウェブサイト:https://peraichi.com/landing_pages/view/aonowa

米山 凱一郎

1996年生まれ。神奈川県茅ヶ崎市出身、藤沢市在住。2017年1月より茅ヶ崎駅前の「コワーキングスペース チガラボ」のスタッフとして働き出したことをきっかけに、地元・湘南地域との関わりを持ちはじめる。現在は「コワーキングスペース チガラボ」のスタッフのほか、月刊『ソトコト』の編集アシスタントも勤めるなど、パラレルキャリアに挑戦中。